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横浜地方裁判所 平成9年(行ウ)54号 判決

原告

山京ビルディング株式会社(X)

右代表者代表取締役

村松喜平

被告

横浜市固定資産評価審査委員会(Y)

右代表者委員長

山田尚典

右訴訟代埋人弁護士

長谷川武雄

事実及び理由

第三 争点に対する判断

一  争点1(七割基準の憲法八四条違反の有無)について

1  判断の順序

原告は、七割基準が租税法律主義を定める憲法八四条に違反する旨主張する。その意味は、いくつかの段階に分かれるので、その点について、以下、項を分けて検討する。

2  評価基準への委任と憲法八四条

憲法八四条は、あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする旨規定し、課税要件及び租税の賦課・徴収の手続が法律によって規定されなければならないこと(租税法律主義)を定めているが、右の規定も、課税上基本的な重要事項は法律で定め、細目的事項は大臣の告示に委任することをおよそ禁じるまでのものではないと解される。これを本件について見ると、法は、土地に対して課される固定資産税の課税標準を、土地の基準年度に係る賦課期日における「価格」で土地課税台帳等に登録されたものとし(三四九条一項)、右「価格」は、「適正な時価」であるとする(三四一条五号)。そして、自治大臣は、土地を評価する基準、評価の実施の方法及び手続を定め、これを告示するものとされている(三八八条一項前段)。このように、法が右の告示に委任したのは、固定資産の評価の基準の内容が専門的技術的事項に及ぶためであり、右のとおりの委任の必要性及び委任事項の具体的個別的明確性に照らすと、法が自治大臣の告示をもって評価基準を定めることを要請したこと自体は、憲法八四条に違反するものではない。

そして、本件で問題となっている七割基準は、評価基準中の定めであるから、右で述べた理由により、法形式上当然に憲法八四条に違反するということはできない。

3  地価公示価格等の七割とする定めと憲法八四条

(一)  地価公示価格等の一〇ないし二〇パーセントを七〇パーセントに改めることの意味 原告は、七割基準が、地価公示価格及び不動産鑑定士又は不動産鑑定士補による鑑定評価から求められた価格等を活用し、これらの価格の七割を目途として宅地を評価すべき旨を定めているのは、それまで地価公示価格の一〇ないし二〇パーセントとされてきた土地の評価額を、法律の規定によらずに七〇パーセントにまで引き上げるものであり、この点において、租税法律主義を定める憲法八四条に違反する旨主張する。

右の立論のうち、まず問題となるのは、固定資産の評価額がこれまで地価公示価格の一〇ないし二〇パーセントであったことが「適正な時価」として容認されていたかということである。この点につき、前記基礎となる事実によれば、各市町村の土地評価のための行政努力にもかかわらず、いわゆるバブル経済期の大都市を中心とした地価高騰に評価事務が追い付かない地域も多く、固定資産評価額は、地価公示価格との間に大きな開差が生じるとともに地域間の格差も生じてきていたことが認められる。右事実によれば、土地の評価額が、地価公示価格の一〇ないし二〇パーセントとされてきたとの事実があるとしても、それは、法令が予定していたものであるとはいえないのであって、客観的時価に比してこのように著しく低廉な価格が「適正な時価」であるとの意識が納税者の間で規範的意識として一般的に定着したとはいえないし、他にこれを認めるに足りる的確な証拠はない。

そうすると、土地の評価額が七割基準という法形式によって地価公示価格の一〇ないし二〇パーセントから七〇パーセントに引き上げられる事態を招来したとしても、七割基準が法の正しい解釈に合致するといえる場合は、七割基準による土地の評価が憲法八四条の趣旨に照らして違憲・無効であるということはできない。

(二)  訴訟の対象性の有無

なお、被告は、被告の設置根拠と権限からすれば、そもそも税率等について被告に審査をする権限はないのであるから、過重な税額を主張する原告の主張は、本件訴訟の対象とはならない旨主張するので、念のため、この点について付言する。

納税者は、固定資産課税台帳に登録された事項について不服を申し立てることができ、右不服の申立ては、市町村の固定資産評価審査委員会が審査すること(四二三条一項、四三二条一項本文)、固定資産税の決定に不服があるときは、納税者は、その取消しの訴えを提起することとなること(四三四条一項)、評価額に対する不服は、右の方法によるものに限られており、固定資産税の賦課に対する不服申立てにおいては、評価額に対する不服を理由とすることはできないこと(四三二条三項、四三四条二項)は、前記基礎となる事実欄は摘示のとおりである。

ところで、固定資産の評価方法は、それ自体は税額や税率とは異なるものであるとしても、その評価方法いかんが税額にそのまま反映するという関係にあるから、評価方法が主要な争点となる事件において、その評価方法の是非が形を変えて税額の是非となる程度の場合には、その点も訴訟の対象たり得るのは当然のことである。被告の主張は、その限りで相当とはいえない。

4  七割基準の内容の合理性の有無

そこで、七割基準が法の正しい解釈に内容的に合致するものであるか否かについて検討する。

(一)  固定資産税の課税標準と評価基準

法は、土地に対して課する固定資産税の課税標準を、基準年度に係る賦課期日における土地の「価格」で土地課税台帳等に登録されたものとし(三四九条一項)、右「価格」とは、「適正な時価」であるとする(三四一条五号)。固定資産税は、原則として、固定資産の所有者に対して(三四三条一項)資産の所有という事実に着目して課される財産税であり、資産から生じる現実の収益に着目して課される収益税とは異なるから、右の「価格」あるいは「時価」は、当該土地の交換価値に着目したもので、正常な条件の下に成立する土地の取引価格、すなわち、客観的な交換価値(以下「客観的時価」という。)をいうものと解される。

このような客観的時価は、本来、個々の土地について鑑定評価理論に従い、個別的に鑑定評価されるべきものであるが、課税対象となる土地は全国に大量に存在することから、これを短期間のうちに行うことは困難である。また、評価に関与する者の個人差のために、市町村間の偏差が生じるおそれもある。そこで、法は、自治大臣が土地の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続、すなわち評価基準を定めてこれを告示することとした上で、市町村長は、原則として、土地の価格の決定につき評価基準によらなければならないものとしている(三八八条一項前段、四〇三条一項)。そして、評価基準においては、標準的な土地について鑑定評価を行って価格を求め、他の土地については、標準的な土地と諸条件を比較した結果に照らして標準的な土地の右価格を補正して評価を行うという手法が採用されている。

このような評価基準の性格から明らかなとおり、評価基準に従って決定された土地の価格は、個別的な鑑定評価による「客観的時価」とかい離する可能性を本質的に含んでいるものであるから、このかい離があることから直ちに当該評価を違法とすることはできす、七割基準が地価公示価格等の七割をもって標準宅地の適正時価としているのは、その「七」の数値の当不当は後に検討することとして、ともかく一定割合としている点は、評価基準による大量的評価方法に内在する誤差の是正方法として合理性を有する手法ということができる。ただし、法は、あくまでも「客観的時価」をもって固定資産税の課税標準と定めているから、(1) 評価基準に従った土地の評価額が、その「客観的時価」を下回る場合も、その下回る程度が課税処分の謙抑制の観点から許容される範囲を超える場合には、租税法律主義ないし課税における合法性の原則から、問題となる余地はあるし、また、(2) 評価基準に従った評価額が、「客観的時価」を上回る場合には、当該評価をもはや正当化することはできず、その超過額の限度で違憲ないし違法とされるべきである(もっとも、当該評価が違憲ないし違法である場合に、当該評価を無効とするか否かという点については、両論があり得るところである。また、(1)の場合、原告がこの点の違法を主張し得るか否かについても、狭義の訴えの利益及び行政事件訴訟法一〇条一項との関係で、両論があり得るところである。)。

(二)  七割基準における「七割」の合理性の有無

(1) まず、七割基準が、そもそも右の観点から容認されるものであるかについて検討する。〔証拠略〕によれば、次の事実が認められる。

七割基準において採用されている「七割」という割合が公表されたのは、自治大臣の諮問機関である中央固定資産評価審議会が、平成三年一一月一四日、「平成六年度評価替えの基本方針」を了承した際のことである。右基本方針において、「平成六年度の土地の評価替えにおいては、土地基本法一六条及び総合土地政策推進要綱(平成三年一月二五日閣議決定)等の趣旨を踏まえ、地価公示価格の一定割合を目標に、評価の均衡化・適正化を図ることとする」旨定められるとともに、「一定割合の具体的数値については、固定資産税の性格と地価公示制度の趣旨との差異、昭和五〇年代の地価安定期における地価公示価格に対する固定資産税評価の割合等から七割程度とし、依命通達の改正等によって明示する」こととされた。この七割という割合は、ア 当時、相続税評価は、地価公示価格の七割を目安として行われていたこと、イ 財団法人資産評価システム研究センターに設けられた土地研究委員会作成の「固定資産税における土地評価の均衡化価・適正化等に関する調査研究報告書」概要において、左記のとおり報告されていたことを考慮して、採用されたものであると考えられている。

<1> 土地の最有効使用と通常の使用とのギャップがもたらす地価の開差(地価公示価格と固定資産税評価の開差)を知る指針として収益価格を用いるべきで、全国の代表的な標準宅地(一四一地点)について、収益価格(固定資産税評価レベル)の精通者価格(地価公示レベルで不動産鑑定士等から聴取したもの)に対する割合を調査したところ、おおむね七割(七二・〇パーセント)であった。

<2> 地価安定期だった昭和五〇年代における固定資産税評価の地価公示価格に対する割合を全国の県庁所在地の基準宅地(最高路線価)について見ると、全国平均で、昭和五四年度六一・一パーセント、昭和五七年度六七・四パーセントであり、七割程度の水準にあった。

<3> 県庁所在地において平成二年に建築された家屋について抽出調査した結果によると、再建築価額の取得価格に対する割合は、木造家屋で六割程度、非木造家屋で七割程度となっていることから、土地の評価水準を地価公示価格の七割程度にすることは、資産間の評価の均衡という観点からも妥当なものと考えられる。

右の事実を踏まえるならば、七割基準が「七割」という割合を採用したことは、課税処分の謙抑性の観点から許容される範囲にあるということができるから、「七割」とする基準それ自体が、租税法律主義ないし課税における合法性の原則から、違憲ないし違法ということはできない。

(2) 原告は、七割基準は、「適正な時価」の七割をもって、土地課税台帳等の登録価格とすべきことを定めたものであると主張するようである。しかしながら、七割基準は「標準宅地の適正な時価を求める場合には(中略)地価公示価格及び(中略)鑑定評価から求められた価格(中略)の七割を目途として評定する」と規定するから、右原告の主張は七割基準の文理に反する。また、七割基準は、右に述べたとおり、いずれの土地にも適正な時価を付すための一方法であるから、その意味でも原告の右のような見解は採り得ない。

(三)  本件各土地に適用される場合における七割基準

そこで、次に、本件評価による価額(評価額)が、本件各土地の「客観的時価」を許容される限度よりも下回るものであるかどうか、また「客観的時価」を上回るものであるかどうか((一)末尾)について検討する。この点は、項を改めて、次の5以下で扱う。

5  本件における土地の評価基準時

(一)  対象年度

法は、土地に対して課する固定資産税の課税標準を、基準年度に係る賦課期日における土地の価格で土地課税台帳等に登録されたものである旨を定め(三四九条一項)、固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日である旨を明確に定めている(三五九条)。したがって、課税標準となる土地の「価格」、すなわち「適正な時価」は、当該年度の初日の属する年の一月一日のものでなければならないから、平成九年度の本件各土地の評価額の適法性を検討する際には、平成九年一月一日における本件各土地の客観的時価を問題とすべきであって、それ以前の日における客観的時価を問題とすべきではない。

(二)  調査に要する期間分の評価時期の変更と補正方法

法は、市町村長による固定資産の価格決定を毎年二月末日までに行うべき旨定めているところ(四一〇条)、大量に存在する土地について適正な時価を算定しなければならないことからすれば、短期間のうちに評価事務のすべてを行うことは困難であり、価格算定の資料とするための標準宅地等の価格の評価が二月よりも相当前に終了していることが事実上必要である。そうすると、賦課期日からこれらの評価事務に要する相当な期間をさかのぼった時点を価格調査作業における基準日とすることが必要となる。

そして、平成九年度を対象とする本件に適用される七割基準及び時点修正基準は、まず平成八年一月一日を基準に価格の評価を行い(七割基準の適用)、かつ平成八年一月一日から同年七月一日までの間に標準宅地等の価格が下落したと認められる場合には七割基準によって求めた評価額にさらに修正を加えることができる(時点修正基準の適用)上、同年七月二日から平成九年一月一日までの間に土地の価格が下落した場合においても、七割基準により平成八年一月一日の時点の価格(評価額)を算定する際にあらかじめ控除した三割の価格の範囲内では、右下落に対応できるものとなっている。そうすると、平成八年七月二日以降の下落があっても、それが右三割の範囲内にとどまる限り、右の方法による評価額は、客観的時価を超えることがなく、右評価は適法といえる。これに対しも下落率が大きいため右の方法による評価額が客観的時価を超えることとなる場合には、当該評価は、その超過額の範囲で違法となると解すべきである。

(三)  七割基準の制定者意思との異同

前記4(二)(1)の認定事実によれば、七割基準において「七割」という割合が採用された理由には、右(二)のように土地の価格の下落にあらかじめ備えるといった趣旨は含まれていなかったと推認される。そうすると、右(二)の解釈は、七割基準の趣旨についての制定者意思と異なるものである可能性があるが、仮にそうであるとしても、その解釈自体が合理的なものであれば、そのことに格別の支障はない。

6  本件各土地の客観的時価

(一)  判断の方法

そこで、本件各土地の平成九年一月一日における客観的時価を算出し、これを被告の本件評価と比較することによって、その評価額が違法となるか否かを検討することとする。

そして、右の客観的時価を算出するためには、評価に関与する者の個人差を排除するため等の目的で用意された評価基準の方式をできる限り採用するのが相当である。しかも、原告も、七割基準及び時点修正基準を除くその余の点については評価基準が一般的な合理性を有するものであることは争わない。そこで、本件標準宅地甲及び乙の本件の賦課期日である平成九年一月一日における時価を求め、それに評価基準所定の算式を適用して、本件各土地の客観的時価を算出し、これと本件評価とを比較することとする。

(二)  本件標準宅地甲及び乙の平成九年一月一日現在の時価

本件標準宅地甲の平成九年一月一日現在の地価公示価格は、一平方メートル当たり二一六万円である。また、本件標準宅地乙の平成九年一月一日現在の地価公示価格相当額は、一平方メートル当たり一六二万円と認められる。その根拠は次のとおりである。すなわち、〔証拠略〕によれば、本件標準宅地甲の地価公示価格は、一平方メートル当たり、平成八年一月一日現在で二七六万円(<1>)、平成九年一月一日現在で二一六万円(<2>)であり、本件標準宅地乙の地価公示価格は、一平方メートル当たり、平成八年一月一日現在で二〇八万円である。そして、平成九年一月一日現在の本件標準宅地乙の地価公示価格を明らかにする証拠がないから、右地価公示価格相当額を、本件標準宅地甲の地価公示価格の下落率から推定することとし、本件標準宅地甲の地価公示価格の一年間の下落率(<2>/<1>)を本件標準宅地乙の平成八年一月一日現在の地価公示価格に乗じると、一平方メートル当たり一六二万円(一万円未満切捨て)となる。

本件においては、本件標準宅地甲及び乙の客観的時価を認定する手掛りとなる適当な証拠は他にないので、冒頭の価額をこれらの土地の客観的時価と認定するのが最も適切である。なお、(一)のとおりここで問題となるのは本件標準宅地甲及び乙の平成九年一月一日現在における客観的時価であるから、右(二)の価額に七割を乗じる必要はないし、適当でもない。

(三)  本件各土地の客観的時価と本件評価

一方、本件評価では、評価基準所定の算式を適用する場合のもとになる標準宅地の価額として、一平方メートル当たり一九三万円(本件標準宅地甲。別紙3の一5)又は一四五万円(本件標準宅地乙。別紙3の二5)を用いており、これらは右(二)のとおりの客観的時価(二一六万円と一六二万円)を下回っており、しかも、本件評価では時点修正基準に従い右算出価額に〇・八七(別紙3の一8(四)、二8(三))を乗じているのであるから、本件評価が、右(二)のとおりの本件標準宅地甲及び乙の客観的時価に評価基準所定の算式を適用した結果である本件各土地の客観的時価を上回っていないことは明らかである。

右のとおり、評価基準所定の算式を適用する対象となる標準宅地の価額を見れば、本件評価が本件各土地の客観的時価を上回らないことは明らかであるが、念のために評価基準所定の算式を適用して本件各土地の客観的時価を算出すると次のとおりである。すなわち、右(二)のとおりの本件標準宅地甲及び乙の価額に、七割基準及び時点修正基準を除いた評価基準を適用し、平成九年一月一日現在の本件各土地の客観的時価を算出した結果は別紙4の計算式のとおりであり、本件土地(一)は一四億〇四一二万一九〇〇円、本件土地(二)は七億一三三五万〇〇二〇円となるが、これらの価格は、本件土地(一)を一〇億九一四〇万四三九六円、本件土地(二)を五億五四一八万八五〇三円とした本件評価による価額を上回っており、その上回る程度は許容限度内にあると認めることができる。

7  財政法三条の類推適用

原告は、財政法三条の類推によって七割基準は違法であると主張する。

しかし、同条は、「租税を除く外、国が国権に基いて収納する」と定め、租税に関する事項を明確に除外している。のみならずも七割基準が右に述べたとおり租税法律主義に反しないから、実質的に見ても財政法三条に反しないことは明らかである。よって、この点に関する原告の右主張は失当である。

8  結論

よって、本件評価について、原告の主張する違憲ないし違法の問題はない。

二  争点2(七割基準の憲法二九条違反の有無)について

1  原告は、平成三年から平成九年まで、本件各土地の収益力が下落したにもかかわらず、この間に前記のとおり税負担を増大させることは憲法二九条に違反するなどと主張する。

2  前記一3(二)のとおり、本件において固定資産の評価方法のために憲法二九条の保障する財産権を侵害する事態が生じているというのであれば、その点は、本件訴訟の対象となり得るものと解する。

しかし、ここで原告が問題とする点は、つまるところ固定資産の評価方法というよりも、収益力と税額との関係であるから、本件訴訟の対象とはならないというべきである。収益力が税額に及ばないということを原告が看過し難いというのであれば、その結果の当否は、課税処分に対する不服申立て又は取消訴訟等の場で争われるべきである。

また、仮に原告がここで本件各土地についての評価方法を問題とする趣旨であっても、評価方法については前記一のとおり格別の違憲ないし違法は認められず、これによって原告の財産権に対し、憲法二九条に違反する侵害が生じているとはいえない。

3  よって、原告の右主張は、いずれにしても理由がない。

三  争点3(七割基準及び時点修正基準の三四九条一項違反の有無)について

1  原告は、七割基準及び時点修正基準が、土地の課税標準である土地の価格の評価において、平成八年七月二日以降平成九年一月一日までの地価の大幅な下落を反映しないまま平成九年度の土地の評価替えを許容するものであり、三四九条一項に違反する旨主張する。

2  しかし、本件においては、前記のとおり、評価基準に従って決定された価額が、平成九年一月一日現在の本件各土地の客観的時価を下回っており、また下回る程度が課税処分の謙抑性の観点から許容できる範囲を超えていないので、本件評価に違憲ないし違法の問題は生じない。

3  よって、原告の主張は理由がない。

四  争点4(七割基準及び時点修正基準の憲法一四条違反の有無)について

1  原告は、平成八年七月二日から平成九年一月一日までの期間の地価の変動の割合は土地毎に異なるはずであるから、この間の期間の地価の変動を考慮しない七割基準及び時点修正基準は、憲法一四条に違反する旨主張する。

2  しかしながら、七割基準及び時点修正基準は、平成九年一月一日までの地価下落率に相違があることを当然のこととしているのであって、比例的な均衡からのかい離の幅が、右のような制度の内圧的な限界として予定された範囲内にとどまる限り、取扱いの違いも合理性を有し、憲法一四条違反の問題は生じないというべきである。

そして、本件においては、平成八年七月二日から平成九年一月一日までの間に、そもそも七割基準が想定した三割の地下の下落が生じていないことは前記認定のとおりであり、比例的な均衡からのかい離の幅が、前記のような制度の内在的な限界として予定された範囲内にとどまっているといえるから、取扱いの違いも合理性を有するといえ、憲法一四条違反の問題が生じているということはできない。

3  したがって、原告の右主張は理由がない。

五  結論

以上の次第であり、原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡光民雄 裁判官 近藤壽邦 弘中聡浩)

別紙一~四〔略〕

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